ぎっくり首と、がんばる優しさ。産後ママとの時間から見えたこと

ぎっくり首と、がんばる優しさ。産後ママとの時間から見えたこと

こんにちは。整体院 福粋(ふくすい)の坂本安楽です。

今日は、「ぎっくり首」で急にご予約くださった、産後ママとの時間を振り返りたいと思います。
首の痛みの奥には、“がんばる優しさ”が静かに積み重なっていました。

赤ちゃんを抱っこしている母親のイメージ


■ 急な「ぎっくり首」でのご来院

昼下がりに新規の電話があり、その日にご来院くださいました。
S様(産後のお母さん)は、にこやかな雰囲気の方で、ご主人が運転する車で福粋まで来られました。

本当は整形外科を受診しようと電話したところ、待ち時間が4時間と言われ、
「他にどこかないかな」と探されている中で、Google検索で福粋を見つけてくださったそうです。

主訴は「首の痛み」。いわゆるぎっくり首のような状態で、特に右後ろの痛みがつらいとのことでした。
2週間前にも同じ場所を痛め、そのときは実家近くの鍼灸接骨院で施術を受けていたそうです。


■ 首だけでなく、体全体ががんばっていた

お話を伺うと、首以外にも

  • 腰の違和感
  • 左足首の古い捻挫
  • 肩こり
  • 頭痛

など、気になるところがいくつかありました。

左足首は、しばらく前に捻挫をされたとのことで、
ベッドの上で足を乗せながら説明してくださる姿からも、
「体のあちこちに無理をかけながら、ここまで来たんだな」という印象を受けました。

福粋の考え方をまだご存じなかったので、
「体を物理的に施術するだけ」というやり方もできますが、僕のメインは「根本回復」です。
そのことをお伝えし、「根本から整えていくこと」にも興味があるかどうかを尋ねました。

すると、S様は迷わず
「根本から治したいです」
と答えられました。


■ 表はにこやか、内側はずっと「緊張モード」

検査では、首の横の筋肉の硬さが目立ちました。
ここが硬い方は、ストレスが強くかかっていることが多いので、いつものように

「首の横の筋肉が硬い方は、ストレスが強い人が多いのですが、そう言われてピンときますか?」

とお聞きすると、

「赤ちゃんが夜泣きが始まっていて、小間切れの睡眠がストレスですかね」

と答えられました。

僕自身は子育ての経験がないので、夜泣きや小間切れの睡眠のたいへんさを、
実感として完全にわかっているとは言えません。
それでも、お話を伺っていると、「体も心も、とにかくがんばり続けている」印象を受けました。

施術に入ると、S様は目を閉じて横になり、ほとんどの時間を静かに過ごされました。
ただ、そばで触れていると、呼吸は小刻みで、リラックスし切れていない感覚が伝わってきました。

「緊張していますか?」とお聞きすると、

「緊張していません」

とのお返事。
この「本人は緊張を自覚していないけれど、体はずっと緊張している」という状態は、
がんばり屋さんの方にとても多いパターンです。


■ 産後ママの優しさと、胸の奥の揺れ

お子さんは最近は「立って抱っこ」であやしていないと寝つかず、
8キロの体重を支えながら、30分以上抱っこすることもあるそうです。

抱っこの姿勢は、

  • 首や肩
  • 足首

に負担がかかりやすく、今回のぎっくり首とも無関係ではないように感じました。

産後ということもあり、胸まわりの緊張や呼吸の浅さも気になりました。
触れていると、胸の奥にまだ受け止めきれていない感情が残っているような印象がありました。

そこで、恐る恐るですが、

「子育てで、不満のようなものはありますか?」

とお聞きすると、

「小間切れの睡眠くらいで、あとは特に… 育児ノイローゼとかもないですね。
赤ちゃんはニコニコすることが多いです」

と返ってきました。

赤ちゃんへの愛情についてお聞きすると、
「赤ちゃんを全部愛しています」と、ハッキリした声で答えられました。

もちろん、子育ての中では疲れたり、余裕がなくなったりする日もあると思います。
それでも、その奥にある愛情や責任感が、身体をずっと支えていたのかもしれません。

ご主人も育児に協力的なようで、その点はにこやかに話してくださいました。

首の症状でもあったので、喉まわりの緊張や、言葉にできていない気持ちも関係しているのかもしれないと感じながら、

「育児の中で、言いたいことや、大きな声で叫びたいことってありますか?」

と尋ねてみると、

「赤ちゃんが可愛いって叫びたいです」

と答えられました。

その言葉の裏には、
「大変なこともあるけれど、がんばってでも“良いお母さん”でいたい」という、
静かな決意のようなものも感じました。


■ 本当のストレス源は「家族の病気」と「愛犬の旅立ち」だった

しばらく施術を続けていると、S様はふと、思い出したように話し始めました。

  • 以前ご病気の治療をしたお母様の、病気再発
  • そのお母様の様子を聞くために里帰りしていたこと
  • 里帰り中に、長く一緒に過ごした愛犬たちの旅立ち

このとき、部屋の空気が静かに変わるのを感じました。

お母様の体のこと、長年一緒に過ごしてきた愛犬たちの旅立ち。
短い期間に、「命に関わる大きな出来事」がいくつも重なっていたのです。

S様ご自身は、

「まだ実感がわかないです」

と話していましたが、
実感が湧かないということは、まだ心が悲しみを受け止めきれていないということでもあります。

足元や下腹部の安心感も大切にしながら、
「身体の土台から、少しでも落ち着きが戻ってくれたら」と祈るような気持ちで触れていました。


■ 施術後:首は軽くなったけれど、呼吸はまだ速いまま

施術の終わりに近づき、ゆっくりと起き上がっていただくと、
S様は思わず、

「あ、首が楽な感じがします」

と一言。

首の痛みは、その場である程度ラクになった様子でした。
ただ、座った状態の呼吸を感じていると、
まだ全身の緊張は抜け切っていないようにも感じました。

セルフケアとして、

  • ゆっくりと息を吐くこと
  • 息を吸うときに「丹田(おへその下)」に空気が入っていくイメージを持つこと

をお伝えしました。

玄関では、にこやかに「またお願いします」とおっしゃってくださいました。

ただ、施術後の空気の中には、まだ抜けきらない緊張のようなものが残っているようにも感じました。

施術者として、その緊張の波を真正面から受け止めすぎると、
こちらの身体にも重さや眠気として反応が出ることがあります。

だからこそ、相手の痛みを背負うのではなく、静かに通り抜ける場を用意することが大切なのだと感じています。


■ 施術者として感じたこと 〜がんばる優しさを、静けさで包む〜

今回のご縁を振り返ると、

  • 産後のからだ
  • 夜泣きによる睡眠不足
  • 家族の病気
  • 愛犬たちの旅立ち
  • 首や腰、足首、肩、頭痛などの症状
  • それでも「赤ちゃんを全部愛しています」と言えるやさしさ

これらすべてを抱えながら、
「にこやかでいよう」とがんばっている女性の姿を、間近で感じる時間だったように思います。

表面は明るくにこやか。
でも、体と深いところの心は、ずっと緊張モードのまま。

施術者として、相手の緊張や悲しみに深く触れる時間は、
こちらの内側にも静かな反応を残すことがあります。

だからこそ、最近は自分に向けて、こんな風にイメージするようにしています。

人の緊張は、私の中に入らず、
私の後ろを静かに通り抜けていく。

相手の緊張や悲しみを「受け取らない」ということではなく、
「通り抜ける場所」を自分の後ろ側に用意しておくイメージです。

そうすることで、
僕自身の静けさも守りながら、目の前の方の「がんばる優しさ」を、
少しでもやわらかく包めるのではないかと感じています。


静かで落ち着いた整体空間

■ おわりに 〜静けさの中で、体は回復をはじめる〜

今回のケースは、
「産後ママのやさしさ」と「家族の命の揺れ」が重なった、とても繊細な時間でした。

首の痛みは、体からのひとつのサインです。
「もう少し、自分の体と心にも静かな時間をあげてほしい」
そんなメッセージが、ぎっくり首という形で出てきたのかもしれません。

整体院 福粋では、症状だけでなく、
その奥にある「がんばる優しさ」や「静かに抱えている悲しみ」も大切にしながら、
ゆっくりと回復をサポートしていきたいと思っています。

ここまで読んでくださって、ありがとうございました。

※ 個人が特定されないよう、内容は一部アレンジ・省略しています。