サツマイモが教えてくれた回復の力|変化しない時間にも、身体の中では何かが続いている

サツマイモが教えてくれた回復の力|変化しない時間にも、身体の中では何かが続いている

福粋の窓際に置いた一本のサツマイモ。
なかなか根が出ず、出た根を虫に食べられ、それでも約3か月かけて葉を伸ばしてきました。
その姿を見ながら、整体で大切にしている「回復する力」について考えたことを書いてみます。

福粋の窓際に、一本のサツマイモがあります。

今ではたくさんの葉を広げていますが、最初からこんな姿だったわけではありません。

むしろ最初の頃は、

「これは本当に芽が出るのだろうか?」

と思いながら、毎日眺めていました。


食べるはずだったサツマイモ

もともとこのサツマイモは、育てるために買ったものではありませんでした。

筋力トレーニングを続ける中で、筋肉の発達を確かめるために食事量を増やす日があり、その食材のひとつとしてサツマイモを定期的に買っていました。

その中に、小さなサツマイモが一本ありました。

食べてみると中が筋張っていて、あまり美味しくありません。

そこで、

「これは食べずに、水に入れて育ててみようかな」

と思いました。

空になった味噌の容器に水を入れ、その中にサツマイモを置きました。

たしか、6月になる少し前だったと思います。

以前にも一度サツマイモを水栽培したことがあり、その時は水に入れて間もなく根や葉がどんどん伸びた記憶がありました。

今回も、すぐに変化するものだと思っていました。

ところが数日経っても、何も起こりません。

水栽培を始めたばかりのサツマイモ

何も変わらない

サツマイモを触ってみると、表面が少しヌルヌルしていました。

このままでは腐るのではないかと思い、それからは毎日水を替え、水を替える時にはサツマイモも軽く洗うようにしました。

すると数日後。

水から出ている部分に、小さな白い根のようなものが出てきました。

「やっと始まった」

と思いました。

ところが翌朝見ると、その白い根がありません。

「昨日見たのは勘違いだったのかな?」と思いました。

しかし数日すると、また白い根が出てきました。

今度は間違いなく確認しました。

最初に出てきた小さな白い根

それなのに、翌日になるとまた無くなっています。

不思議に思って容器の周りを見てみると、小さな虫の糞のようなものが落ちていました。

周囲の植木鉢などを掃除してみると、小さなゴキブリがいました。

どうやら、夜の間に出てきた根を食べていたようです。

守ろうとするほど、変化しなくなった

ゴキブリを退治したあと、今度こそ根が伸びると思いました。

ところが、それから何日経っても根が出てきません。

また虫に食べられてはいけないと思って、帰る時にビニール袋をかぶせてみたり、高い棚の上へ移動してみたりしました。

それでも変化しませんでした。

10日ほど経っても何も起こらず、

「もしかすると、僕が毎日のように場所を動かしていることが良くないのかな」

と思いました。

そこで、水だけは替えるけれど、できるだけ場所を動かさず、そのままにしてみることにしました。

すると、白い根が無くなってから2週間ほど経った頃。

再び、小さな根が出てきました。

ようやく出てきたと思っていたのですが、少し油断している間に、また虫に食べられてしまいました。

振り出しに戻ったように見えました。

それでも、サツマイモは終わっていなかった

今度は必要以上に動かさず、水だけを替えながら見守ることにしました。

水栽培を始めてから、すでに2か月弱経っていました。

しばらくすると、白い根が一本出ました。

その後、二本、三本と増えていきました。

そしてそのうちの一本が、水の中へ伸び始めました。

「水の中なら虫にも食べられにくいだろう」と思い、少し安心しました。

ところが、その小さな根が出た状態のまま、また何日も過ぎていきました。

見た目には、ほとんど変化がありません。

それから一週間ほど経った頃でしょうか。

今度は、水から出ているサツマイモの表面から、小さな紫色の芽が出てきました。

芽が出始めた頃

さらに、水の中からも別の芽が出てきました。

その芽が少しずつ伸び、やがて葉のようなものが開いてきました。

そこからは、それまでが嘘だったように変化が早くなりました。

根が伸び、芽が伸び、葉が開きました。

そして葉は少しずつ大きくなり、新しい葉も次々に増えていきました。

水栽培を始めてから約3か月。

今では、最初のサツマイモからは想像できないほど、たくさんの葉が広がっています。

現在の葉が大きく広がったサツマイモ


何も起きていないように見える時間

このサツマイモを毎日眺めながら、整体にも似ているところがあるように感じました。

人間側から見ると、

「早く根が出てほしい」

「せっかく出た根を守らなければ」

「場所を変えた方がいいのではないか」

「何かもっとしてあげた方がいいのではないか」

と考えます。

僕も、サツマイモをあちらへ移動したり、こちらへ移動したりしていました。

けれど、僕が何かをしたから芽が出たわけではありません。

反対に、僕が動かさなくなったから芽が出た、と単純に言い切ることもできないと思います。

サツマイモにはサツマイモなりの条件と、タイミングがあったのでしょう。

こちらには何も起きていないように見えていた時間にも、サツマイモの中では何かが続いていたのかもしれません。

変化が見えない時間と、何も起きていない時間は、同じではないのかもしれません。

回復も、外から作るものではないのかもしれない

整体をしていると、つい、

「ここを変えれば良くなる」

「この部分を整えれば身体が変わる」

と考えたくなることがあります。

もちろん、身体に触れることによって変化が起こることもあります。

ですが最近は、

回復そのものを整体師が作っているわけではない

と感じることが増えました。

身体にはもともと、その人なりにバランスを取り、傷ついたものを修復し、環境に適応しようとする働きがあります。

整体でできるのは、その働きを無理に引き起こすことではなく、

身体が動きやすい方向を一緒に探したり、邪魔になっているものがあれば少し減らしたりすることなのではないか。

そんなふうに考えるようになりました。

根を食べられても、終わりではなかった

今回のサツマイモは、せっかく出た根を何度か虫に食べられました。

そのたびに、僕には振り出しに戻ったように見えました。

しかしサツマイモにとっては、そこで終わりではありませんでした。

しばらく何も起こらないように見えても、また別の場所から根が出てきました。

そして、ある時から芽が伸び、葉が広がり始めました。

人の身体も同じだ、と言い切ることはできません。

植物と人間は違います。

それでも、このサツマイモを見ながら、

「今変化が見えないからといって、本当にここまでなのだろうか」

と思いました。

身体の表面には変化が見えなくても、その人の中で何かが続いていることはあるのかもしれません。

だから僕は、変化が乏しい時ほど、

「もっと強くやればいい」

「何とか結果を出さなければ」

と急ぐのではなく、

一度立ち止まって身体を見てみたいと思っています。

サツマイモに勇気づけられるとは思わなかった

最初は、食べるにはあまり美味しくなかった一本のサツマイモでした。

それを何となく水に入れただけでした。

まさか3か月後に、そのサツマイモを見ながら自分の整体について考えるとは思っていませんでした。

何度も根を食べられ、何週間もほとんど変化しない時期がありました。

それでもサツマイモは、自分のタイミングで根を出し、芽を出し、葉を伸ばしていきました。

僕が育てたというより、僕は、その過程をそばで見せてもらっただけなのかもしれません。

そして、その姿に少し勇気づけられました。

今後もう少し大きくなったら、母に聞いて、家の畑へ植えてみたいと思っています。

畑へ行けば、今度は虫だけではなく、イノシシなど別の心配も出てくるかもしれません。

それでも、このサツマイモなら、

またその時の環境の中で、自分なりの生き方を始めるのではないか。

そんなことを少し楽しみにしています。

人の身体も、自分の人生も、こちらが思った通りの速さでは進まないことがあります。

けれど、

変化していないように見える時間まで、すべて止まっているとは限らない。

窓際に置いた一本のサツマイモから、そんなことを教えてもらった気がしています。