筋トレの可動域は広いほどよいのか|今の身体で制御できる範囲から始める

※この記事は、一般的な情報と、整体院福粋で身体を見てきた経験、院長自身のトレーニング経験をもとに書いています。運動中に関節の痛みや強い違和感が出る場合は、無理に続けず、必要に応じて医療機関へご相談ください。

筋トレの可動域は広いほどよいのか|今の身体で制御できる範囲から始める

筋トレでは、

「できるだけ大きく動かした方がよい」

「筋肉を十分に伸ばしてから、最後まで縮めることが大切」

と言われることがあります。

スクワットなら、できるだけ深くしゃがむ。

腕立て伏せなら、胸をできるだけ深く下ろす。

ダンベルカールなら、肘を伸ばした位置から最後まで曲げる。

このように、動作の始まりから終わりまでを広く使う方法は、一般に全可動域、またはフルレンジと呼ばれます。

筋肉を大きく伸び縮みさせるために、全可動域で行うことには意味があります。

しかし、可動域は広ければ広いほど、すべての人にとって必ずよいのでしょうか。

実際には、関節の動き、身体の緊張、扱う重量、運動経験などによって、安定して動かせる範囲は異なります。

大きく動こうとした結果、姿勢が崩れたり、関節に違和感が出たりすることもあります。

筋トレの可動域は、広ければ広いほどよいとは限りません。今の身体で姿勢を保ち、筋肉を使いながら戻って来られる範囲を大切にします。

筋トレでいう「可動域」とは

可動域とは、身体や関節を動かす範囲のことです。

筋トレでは、種目ごとに次のような動きの大きさを表します。

  • スクワットで、どこまで腰を下ろすか
  • 腕立て伏せで、どこまで胸を下ろすか
  • ダンベルカールで、どこまで肘を伸ばして曲げるか
  • ショルダープレスで、どこまで腕を下ろして上げるか
  • かかと上げで、どこまでかかとを下ろして持ち上げるか

動作の始まりから終わりまで広く動かす方法を、全可動域やフルレンジと呼ぶことがあります。

一方で、動作の一部分を繰り返す方法は、パーシャルレンジ、パーシャルレップなどと呼ばれます。

ダンベルカールのフルレンジとパーシャルレップの可動域を比較した画像

大きく動かすことには意味があります

全可動域で行うと、筋肉を比較的大きく伸び縮みさせることができます。

日常では使いづらい範囲まで、筋肉や関節を動かす練習にもなります。

また、一つの種目の中で広い範囲を使うことで、動作の位置による負荷の違いも経験できます。

そのため、現在の身体で無理なく行えるのであれば、全可動域を使うことはよい方法の一つです。

ただし、全可動域とは、見本の人とまったく同じ位置まで動かすという意味ではありません。

見本の人と同じ位置まで無理に動かすのではなく、その人が姿勢を保ち、自分の力で制御できる可動域の中で行います。

関節が動く範囲と、筋肉で制御できる範囲は同じとは限りません

身体は、力を抜いた状態や、人に押してもらった状態では、かなり広く動くことがあります。

しかし、重りを持った状態で、その範囲をすべて安定して使えるとは限りません。

深い位置へは入れても、そこから自分の力で戻れない。

重りに引っ張られることで、その位置まで届いている。

関節へ重さを預けることで、姿勢を保っている。

別の部分を反らせたり、傾けたりして動きを補っている。

そのような状態では、身体としては広く動いていても、使いたい筋肉で動きを制御できていないことがあります。

可動域の広さに関連したストレッチについても書いている記事はこちらです。

毎日ストレッチしているのに身体が硬くなることもある|伸ばしすぎに注意したい理由

その位置まで行けるかだけでなく、その位置から自分の力で戻って来られるかを確認します。

スクワットは、深くしゃがむほどよいのでしょうか

スクワットでは、深くしゃがむほどよいと言われることがあります。

確かに、深くしゃがむことで、脚やお尻の筋肉を広い範囲で動かせる場合があります。

しかし、深くなるにつれて、

  • 骨盤が大きく丸まる
  • 上体を保てなくなる
  • 膝や股関節に引っ掛かりが出る
  • 立ち上がる時に腰へ力が集中する
  • 勢いをつけなければ戻れなくなる

ということもあります。

そのような時は、無理に深さを求める必要はありません。

姿勢を保ちながら、脚やお尻の筋肉を使って立ち上がれる深さまでにします。

椅子を後ろに置き、軽く触れる位置を目安にしてもよいでしょう。

動きが安定してきたら、少しずつ深さを変えていくこともできます。

可動域を狭くすると、繰り返せる回数が増えることがあります

動作全体を使う全可動域に比べて、パーシャルレップでは一回の移動距離が短くなります。

そのため、同じ重さでも、全可動域より多くの回数を繰り返せることがあります。

私自身も、パーシャルレップにすると、全可動域よりかなり回数を増やせることがあります。

回数が増えること自体を、問題だとは考えていません。

大切なのは、回数だけを増やすことではなく、その範囲で使いたい筋肉を感じながら動かせているかです。

身体を振ったり、勢いだけで細かく動かしたりしているのであれば、回数が増えても、狙った筋肉から動きが外れている可能性があります。

一方で、筋肉の張りを保ち、動作を自分で制御しながら繰り返せているのであれば、パーシャルレップも一つのトレーニング方法になります。

筋肉に効きやすい範囲を繰り返す方法もあります

種目を行っていると、動作のすべての位置で、同じように筋肉へ負荷を感じるわけではありません。

ある位置では筋肉へ強い張りを感じ、別の位置では負荷が抜けたように感じることがあります。

私は、使いたい筋肉へ負荷を感じやすい範囲を見つけ、その部分でパーシャルレップを繰り返すことがあります。

筋肉の緊張が抜けにくい範囲で繰り返すため、筋肉へ血液が集まるようなパンプ感も起こりやすくなります。

パーシャルレップは、単に楽な範囲だけを動かす方法とは限りません。

筋肉に負荷を感じやすい範囲を選び、そこを丁寧に繰り返す方法にもなります。

狭い可動域でも、使いたい筋肉の張りを保ちながら繰り返せば、筋肉へしっかりと負荷を感じられることがあります。

たとえば、筋肉が強く縮んだ位置に近い範囲で、緊張を保ちながら繰り返す方法もあります。

上腕二頭筋が縮んだ位置に近い範囲でパーシャルレップを行う男性

パンプ感を目印にしながら、関節の反応も確認します

パーシャルレップを続けると、筋肉が張り、膨らんだように感じることがあります。

私は、使いたい筋肉にしっかりとパンプ感が出ていれば、ひとまずその日のトレーニングは成功だったと考えています。

ただし、すべての人にとって、強くパンプすれば必ずよいトレーニングだったと言えるわけではないと思います。

パンプを求めるあまり、関節に痛みが出るまで回数を続けたり、姿勢が大きく崩れても動かしたりする必要はありません。

使いたい筋肉のパンプ感が心地よく、動作後にも関節の違和感が残らないのであれば、その日の身体に合った方法だったと考えることができます。

トレーニング後に腕のパンプ感と身体の状態を確かめている男性

全可動域でもパーシャルレップでも、気分よく行えること

私は、全可動域とパーシャルレップのどちらかだけが正しいとは考えていません。

全可動域で、筋肉を大きく伸び縮みさせることが気持ちよい日もあります。

一方で、筋肉へ負荷を感じやすい範囲をパーシャルレップで繰り返す方が、身体に合う日もあります。

その時に、

  • 筋肉の動きを感じられる
  • 関節に痛みがない
  • 呼吸をしながら動かせる
  • 身体を自分で制御できる
  • トレーニング後に気分がよい

のであれば、どちらの方法も使うことができます。

方法の名前より、現在の身体がどのように反応しているかを見ていきます。

両方を取り入れる方法もあります

全可動域とパーシャルレップは、どちらか一方だけを選ばなければならないものではありません。

一つのトレーニングの中で、両方を組み合わせることもできます。

たとえば、最初は全可動域で動きます。

筋肉が疲れ、全可動域を安定して続けることが難しくなったら、筋肉へ負荷を感じやすい範囲でパーシャルレップを追加します。

反対に、最初に軽いパーシャルレップで筋肉の位置や動きを確かめ、その後に全可動域へ広げてもよいでしょう。

また、同じ種目でも、日によって方法を変えることができます。

  • 今日は全可動域を中心にする
  • 次回はパーシャルレップを多めにする
  • 一セットの中で両方を行う
  • 種目によって使い分ける

両方を取り入れることで、動作の広い範囲を使いながら、特に筋肉へ負荷を感じやすい範囲も繰り返すことができます。

私の感覚でいう「鍛え残しを少なくする万能型」に近い方法です。

ただし、すべてを一度に行ってトレーニング量が増えすぎれば、身体の回復が追いつかなくなることもあります。

全可動域とパーシャルレップを組み合わせる時も、翌日の疲労や身体の反応を見ながら量を調整します。

パーシャルレップは、動かす位置によっても性質が変わります

同じパーシャルレップでも、どの範囲を繰り返すかによって、筋肉の感じ方は変わります。

筋肉が大きく伸びた位置に近い範囲。

筋肉が強く縮む位置に近い範囲。

動作の中央で、負荷を感じやすい範囲。

それぞれ、扱いやすい重さや繰り返せる回数、筋肉の張り方が異なります。

そのため、「パーシャルレップをしている」というだけではなく、

どの位置で筋肉を感じているのか。

どの位置で関節へ負担を感じるのか。

どこから姿勢が崩れ始めるのか。

を確認します。

違和感が出る範囲を無理に繰り返すのではなく、筋肉を感じながら安定して動かせる位置を探します。

筋肉の感覚が消える位置まで、無理に動かす必要はありません

可動域を広げることに意識が向きすぎると、手足をどこまで動かしたかだけを見やすくなります。

しかし、深く動かすにつれて、使いたい筋肉の感覚が消えることがあります。

代わりに、

  • 関節へ重さが乗る
  • 腰を反らせる
  • 肩をすくめる
  • 勢いを使う
  • 別の筋肉で動きを補う

ようになることがあります。

その場合は、筋肉の感覚が保てる位置まで可動域を戻します。

見本より狭い範囲になっても、狙った筋肉を自分で動かせている方が、現在の身体には合っているかもしれません。

見本どおりの形へ身体を無理に合わせない考え方については、こちらの記事でも紹介しています。

正しいフォームが身体に合わないこともある|見本どおりに動けなくても大丈夫です

可動域は、その日の身体によっても変わります

自分に合う可動域は、いつも同じとは限りません。

前回は大きく動かせても、今日は疲労や身体の緊張によって、同じ範囲が動かしづらいことがあります。

反対に、最初は狭く感じても、身体が温まり、動きに慣れることで、少しずつ可動域が広がることもあります。

そのため、最初の一回から最大まで動かすのではなく、小さな範囲から身体の反応を確かめます。

違和感がなければ少し広げます。

筋肉の感覚がなくなったり、姿勢が崩れたりする手前で折り返します。

その日の身体に合わせて可動域を変えることは、フォームが定まっていないということではありません。

身体の状態を確認しながら、現在使える範囲を選んでいるということです。

自分に合う可動域を確認する目印

どこまで動けばよいか迷った時は、次の点を確認します。

  • 呼吸を止めずに動かせる
  • 勢いを使わずに折り返せる
  • 毎回ほぼ同じ軌道で動かせる
  • 使いたい筋肉の張りや伸び縮みを感じられる
  • 関節に痛みや強い引っ掛かりがない
  • 腰や肩など、別の部分で大きく補わない
  • 動作の終点から自分の力で戻れる
  • 運動後や翌日に関節の痛みを残さない

一つでも強い違和感がある場合は、重さ、回数、可動域を見直します。

可動域を狭くすることは、後退ではありません

以前より動かす範囲が狭くなると、身体が弱くなったように感じる方もいるかもしれません。

しかし、可動域を狭くすることは、必ずしも後退ではありません。

狭い範囲へ戻すことで、

  • 姿勢を安定させる
  • 筋肉の動きを感じる
  • 関節への違和感を避ける
  • 動作を自分で制御する

ことができる場合があります。

その範囲で安定して動けるようになった後、必要に応じて少しずつ広げていけばよいのです。

すでに痛みや引っ掛かりがある方へ

筋トレ中に肩や腰、膝、股関節などへ痛みや引っ掛かりが出る場合は、無理に全可動域を続けないことが大切です。

可動域を狭くすれば必ず安全になる、というわけでもありません。

狭い範囲でも、同じ場所へ負担が集中していれば、違和感が続くことがあります。

まず、

どの位置から違和感が出るのか。

重さを軽くすると変わるのか。

動かす方向を少し変えると楽になるのか。

運動後や翌日に症状が残るのか。

を確認します。

強い痛み、腫れ、しびれ、急な筋力低下などがある場合は、トレーニングを中止し、医療機関へご相談ください。

広さより、身体を制御できる範囲を大切にする

全可動域には、筋肉を広く伸び縮みさせられるよさがあります。

パーシャルレップには、筋肉へ負荷を感じやすい範囲を繰り返し、パンプ感や筋肉の動きへ集中しやすいよさがあります。

どちらか一方だけを正解にする必要はありません。

全可動域が気持ちよくできる日は、大きく動かす。

パーシャルレップの方が筋肉を感じやすい日は、その範囲を丁寧に繰り返す。

両方を使いたい時は、トレーニング量を見ながら組み合わせる。

その日の身体と目的に合わせて選びます。

可動域は、広さを競うものではありません。

その位置へ行けるかより、その位置から自分の力で戻れること。

全可動域かパーシャルレップかより、筋肉を感じながら気分よく動かせること。

今の身体で安定して使える範囲を、少しずつ育てていきましょう。

どの可動域で運動すればよいか分からない方へ

太田市の整体院福粋では、筋トレをすると肩や腰、膝などに違和感が出る方や、どこまで身体を動かせばよいか分からない方にも、現在の状態を確認しながら対応しています。

見本と同じ深さや広さへ無理に合わせるのではなく、関節の動き、身体の緊張、筋肉の感覚を確認し、その方が安定して行える範囲を一緒に探します。

身体の状態に応じて、整体、トレーニング、または両方を組み合わせて行います。

整体師と始める無理のないパーソナルトレーニングについてはこちら