ぎっくり首と、がんばる優しさ。産後ママとの時間から見えたこと

こんにちは。整体院 福粋(ふくすい)の坂本安楽です。
今日は、「ぎっくり首」で急にご予約くださった、産後ママとの時間を振り返りたいと思います。
首の痛みの奥には、“がんばる優しさ”が静かに積み重なっていました。
■ 急な「ぎっくり首」でのご来院
午後2時過ぎに新規の電話があり、その15分後にはご来院くださいました。
S様(28歳・女性)は、にこやかな雰囲気の方で、ご主人が運転する車で福粋まで来られました。
本当は整形外科を受診しようと電話したところ、待ち時間が4時間と言われ、
「他にどこかないかな」と探されている中で、Google検索で福粋を見つけてくださったそうです。
主訴は「首の痛み」。いわゆるぎっくり首のような状態で、特に右後ろの痛みがつらいとのことでした。
2週間前にも同じ場所を痛め、そのときは実家(東京)近くの鍼灸接骨院で施術を受けていたそうです。
■ 首だけでなく、体全体ががんばっていた
お話を伺うと、首以外にも
- 腰の違和感
- 左足首の古い捻挫
- 肩こり
- 頭痛
など、気になるところがいくつかありました。
左足首は、しばらく前に捻挫をされたとのことで、
ベッドの上で足を乗せながら説明してくださる姿からも、
「体のあちこちに無理をかけながら、ここまで来たんだな」という印象を受けました。
福粋の考え方をまだご存じなかったので、
「体を物理的に施術するだけ」というやり方もできますが、僕のメインは「根本回復」です。
そのことをお伝えし、「根本から整えていくこと」にも興味があるかどうかを尋ねました。
すると、S様は迷わず
「根本から治したいです」
と答えられました。
■ 表はにこやか、内側はずっと「緊張モード」
検査では、首の横の筋肉の硬さが目立ちました。
ここが硬い方は、ストレスが強くかかっていることが多いので、いつものように
「首の横の筋肉が硬い方は、ストレスが強い人が多いのですが、そう言われてピンときますか?」
とお聞きすると、
「1歳の女の子が夜泣きが始まっていて、小間切れの睡眠がストレスですかね」
と答えられました。
僕自身は子育ての経験がないので、夜泣きや小間切れの睡眠のたいへんさを、
実感として完全にわかっているとは言えません。
それでも、お話を伺っていると、「体も心も、とにかくがんばり続けている」印象を受けました。
施術に入ると、S様は目を閉じて横になり、ほとんどの時間を静かに過ごされました。
ただ、そばで触れていると、呼吸は小刻みで、リラックスし切れていない感覚が伝わってきました。
「緊張していますか?」とお聞きすると、
「緊張していません」
とのお返事。
この「本人は緊張を自覚していないけれど、体はずっと緊張している」という状態は、
がんばり屋さんの方にとても多いパターンです。
■ 産後ママの優しさと、胸の奥の揺れ
お子さんは1歳の女の子。最近は「立って抱っこ」であやしていないと寝つかず、
8キロの体重を支えながら、30分以上抱っこすることもあるそうです。
抱っこの姿勢は、
- 首や肩
- 腰
- 足首
に負担がかかりやすく、今回のぎっくり首とも無関係ではないように感じました。
産後ということもあり、ハート(第4チャクラ)の状態も気になりました。
自分のハートを感じてみると、S様の胸のあたりに、
光が半分だけ欠けているような印象を受けました。
そこで、恐る恐るですが、
「子育てで、不満のようなものはありますか?」
とお聞きすると、
「小間切れの睡眠くらいで、あとは特に… 育児ノイローゼとかもないですね。
赤ちゃんはニコニコすることが多いです」
と返ってきました。
赤ちゃんへの愛情についてお聞きすると、
「赤ちゃんを全部愛しています」と、ハッキリした声で答えられました。
ご主人も育児に協力的なようで、その点はにこやかに話してくださいました。
首の症状でもあったので、第5チャクラ(喉)にも光を集めながら、
「育児の中で、言いたいことや、大きな声で叫びたいことってありますか?」
と尋ねてみると、
「赤ちゃんが可愛いって叫びたいです」
と答えられました。
その言葉の裏には、
「大変なこともあるけれど、がんばってでも“良いお母さん”でいたい」という、
静かな決意のようなものも感じました。
■ 本当のストレス源は「家族の病気」と「愛犬の旅立ち」だった
しばらく施術を続けていると、S様はふと、思い出したように話し始めました。
- 2年前に卵巣がんの治療をしたお母様の、がん再発
- そのお母様の様子を聞くために里帰りしていたこと
- 里帰り中に、18歳になる実家の愛犬が亡くなったこと
- さらに、その2日後にもう1匹の愛犬も後を追うように亡くなったこと
このとき、部屋の空気が静かに変わるのを感じました。
お母様の体のこと、長年一緒に過ごしてきた愛犬たちの旅立ち。
短い期間に、「命に関わる大きな出来事」がいくつも重なっていたのです。
S様ご自身は、
「まだ実感がわかないです」
と話していましたが、
実感が湧かないということは、まだ心が悲しみを受け止めきれていないということでもあります。
第1チャクラ・第2チャクラにも光を集めながら、
「足元から、少しでも安心が戻ってくれたら」と祈るような気持ちで触れていました。
■ 施術後:首は軽くなったけれど、呼吸はまだ速いまま
施術の終わりに近づき、ゆっくりと起き上がっていただくと、
S様は思わず、
「あ、首が楽な感じがします」
と一言。
首の痛みは、その場である程度ラクになった様子でした。
ただ、座った状態の呼吸を感じていると、
まだ全身の緊張は抜け切っていないようにも感じました。
セルフケアとして、
- ゆっくりと息を吐くこと
- 息を吸うときに「丹田(おへその下)」に空気が入っていくイメージを持つこと
をお伝えしました。
玄関では、にこやかに「またお願いします」とおっしゃってくださり、
引き戸をパタンと閉めて帰って行かれました。
その「戸の閉まり方」から、なぜか僕の中には少し嫌な感覚が残りました。
施術が終わったあとも、モヤモヤとした感覚と強い眠気があり、
その後、夕方に1時間ほど眠ってしまいました。
■ 施術者として感じたこと 〜がんばる優しさを、静けさで包む〜
今回のご縁を振り返ると、
- 産後のからだ
- 夜泣きによる睡眠不足
- 家族の病気
- 愛犬たちの旅立ち
- 首や腰、足首、肩、頭痛などの症状
- それでも「赤ちゃんを全部愛しています」と言えるやさしさ
これらすべてを抱えながら、
「にこやかでいよう」とがんばっている女性の姿を、間近で感じる時間だったように思います。
表面は明るくにこやか。
でも、体と深いところの心は、ずっと緊張モードのまま。
施術者として、その緊張の波を全て受け止めようとしてしまうと、
僕自身もあとでモヤモヤしたり、強い眠気に襲われたりします。
そんなとき、最近は自分に向けて、こんな風にイメージするようにしています。
人の緊張は、私の中に入らず、
私の後ろを静かに通り抜けていく。
相手の緊張や悲しみを「受け取らない」ということではなく、
「通り抜ける場所」を自分の後ろ側に用意しておくイメージです。
そうすることで、
僕自身の静けさも守りながら、目の前の方の「がんばる優しさ」を、
少しでもやわらかく包めるのではないかと感じています。
■ おわりに 〜静けさの中で、体は回復をはじめる〜
今回のケースは、
「産後ママのやさしさ」と「家族の命の揺れ」が重なった、とても繊細な時間でした。
首の痛みは、体からのひとつのサインです。
「もう少し、自分の体と心にも静かな時間をあげてほしい」
そんなメッセージが、ぎっくり首という形で出てきたのかもしれません。
整体院 福粋では、症状だけでなく、
その奥にある「がんばる優しさ」や「静かに抱えている悲しみ」も大切にしながら、
ゆっくりと回復をサポートしていきたいと思っています。
ここまで読んでくださって、ありがとうございました。
※ 個人が特定されないよう、内容は一部アレンジ・省略しています。
