遠ざかったストレスと、回復の芽

遠ざかったストレスと、回復の芽

― 院長メッセージ・静けさシリーズ ―

遠ざかったストレスと、回復の芽

 

令和5年の秋から通ってくださっているKSさんが、久しぶりに来院されました。 左半身のだるさと頭痛――。 いつも、「昨日から」とおっしゃるのが印象的です。

 

痛みは肉体の信号のようでいて、 その奥では心の声が静かに揺れています。 職場のことを尋ねても、「うーん、特にないですかね」と少し考えこまれる。 もしかしたら、かつてのストレスを遠くに追いやってしまったのかもしれません。 体はその“記憶”を、まだ覚えているのです。

 

今回は、腰を中心に回復の力が働きやすいように整え、 首や肩を「広がる」イメージで施術しました。 静かに触れていると、体の奥に眠っていた小さな回復の芽が動き出す感覚がありました。

 

施術の終わりに、私はこう伝えました。 「ハートが温かくなるようなことを、時々してみてください。 大きなことじゃなくても、気分が上がるようなことです。」 すると、KSさんは少し笑って「カラオケが好きですね」と言われました。

 

カラオケ。 それは声を出し、胸をひらく行為。 頭の奥まで血が通い、感情がほどけていく。 医学的というより、生命的な回復の道です。

 

「最近、気分が晴れる日とそうでない日ってありますか?」 「今、体がどんな時に“ホッとする”感じがありますか?」 そんな問いかけから、心は少しずつ、 「何も感じない」から「感じていい」に戻っていきます。

 

体は、過去を覚えています。 でも、心は今を選べます。 ストレスを遠ざけたその先に、 新しい“回復の芽”が静かに育ち始めています。

 

― 整体院 福粋 院長 坂本安楽